話せなかった思い その1

もう秋になりました。
平等院も紅葉が美しくなってきました。

さて、こんな出会いがありました。
病院の見学を申し出られた一人の妊婦さんとの出会いです。
仮にその方をAさんとしましょう。
Aさんは2人の子供さんを他院で出産された方です。

入院のお部屋を回り、分娩室を案内したとき
Aさん「手術室ってどんなかんじですか?」
私「前回帝王切開でしたか?」
Aさん「はい。一人目は、経膣分娩でしたが、二人目は帝王切開でした…」
私「そうでしたか。外からなら見られますよ」
そう言って外から手術室を見てもらいました。
その時、私にはAさんの表情が何となく曇った気がしたんです。

私「なぜ、帝王切開になられたんですか?」
Aさん「赤ちゃんがあまり元気がないということだったんです…」
私「そうでしたか」
Aさん「今回もやっぱり帝王切開になりますよね…」
私「基本的にはそうなることが多いですが…最終的には医師の判断ですね」
Aさん「……」
何か思いを抱えておられるのかもしれない、私は直観で思いました。

思いきって私は「何か前回の出産について思いを持っておられるのですか」と聞きました。
帝王切開になってしまったことに悩み苦しむお母さんは、少なくないようです。
また、その苦しみを語れないままの方もおられるようです。

Aさんは、「はい…」
私「もし、Aさんが嫌でなければお聞きしますよ」
Aさんは、「……実は」
そして長い間抱えていた思いを語りだされました。

次回に続きます。

永井

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